2020-09

Ⅳ.母在宅介護2

むすめがかえてきますように

グループホームでのある年の七夕の短冊に震えるような字で「むすめがかえて(帰って?)きますように」と書かれていた 母は、一度目の結婚で生まれて1年も経たない子をおいて家を出されて 2度目の結婚で生まれた私は幼少時に交通事故で生死の間をさまよう...
Ⅴ.それから・・・

見知らぬ男の子

亡くなった母の出棺前 棺の中には母のいくつかの私物と母への手紙と そしてアルバムの中にあった見たことのない知らない男の子の写真を入れた 知らない男の子が誰なのか分かったのは私が高校生の頃だっただろうか 母はいますか?と知らない男の人から電話...
Ⅳ.母在宅介護2

はじまり

このまま家でもみていけそうだ 母が老健から一時退所して一定期間を家で過ごしたら戻る予定で 老健の職員の方からも「またね」といって送り出してもらったが 家に帰ってくると老健に入所する前より足腰もしっかりして 人に頼らず何でも自分からしようとす...
Ⅲ.父の入院と介護

ぴったりのことば

「お母さんを大切にしないとね」 父が亡くなった病院でお世話になったご挨拶をしたときに婦長さんがかけてくれたことば 人が亡くなった時にどんな言葉をかけたらいいのか 大事な場面で相手にかけるぴったりの言葉選びは難しい 同じ言葉でも人や立場によっ...
Ⅲ.父の入院と介護

温度差

「あ、お蕎麦屋さんが来た」どこかの病室のドアがバタンと開く音が聞こえるとベッドに寝ている父が言った 父の病室にお蕎麦屋さんが来るわけないが父はお腹が空いてるのかなと思いながら認知症の思考回路には逆らわず私は、「あ、そう」と相槌をうった 誤嚥...
Ⅲ.父の入院と介護

夜明けの着信

夜明けの着信で父の危篤を知り慌てて支度をして病院に到着すると 肺炎で今晩が山場だと聞かされた 2-3日前に電車で2時間ほどかけて老健まで父に会いに行った時には特に変わった様子もなかったが 会わせたい人がいたらすぐ呼んだほうがいいそして心肺停...
Ⅲ.父の入院と介護

横紋筋融解症

父が立てなくなってしまったのは横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)という聞きなれない名前の病気のせいだった 生まれて初めて聞いたこの珍しい病名が不思議でたまらなくて何度も反芻してオウモンキンユウカイショウを記憶にしっかり留めた 父が救...
Ⅲ.父の入院と介護

別世界

朝、自室で目を覚ますと部屋中が煙だらけで真っ白になっていた 火事!? 何が起こったかわからないがとにかくただ事ではない! 慌てて飛び起きて1階まで階段を降りていくと 自室よりもさらに真っ白の密度が濃い煙と焦げた臭いのキッチンで父が「火事だ、...
Ⅲ.父の入院と介護

こぼれたミルク

温めたミルクをマグカップで椅子に座る父が差し出した両手の中において私が手を離すとちゃんと持っていることができずにこぼしてしまった 眠たかったのかもうマグカップを受けとる力さえ残っていなかったのか 父はお腹の調子を気にしてか自分でミルクをあた...
Ⅲ.父の入院と介護

選手交代2

そんなにたくさん飲んだら駄目だよと言うと たくさん残ってるしたまには沢山のんだ方が体にもいいんだと父が答えて 割と従順に父に従うことの多かった母もそれに続いてそうそう、たまには沢山のんだ方がいいと同調する 父が、父自身と母の食後に飲む薬を一...