詩的介護

Ⅱ.母在宅介護1

心がえぐられた瞬間

母の片側のお尻の足との境くらいの所が痣のように黒ずんでいて 様々な事例を扱う介護の現場の人からはそんな風に思える状態だったのかもしれないが お尻の下ところにドーナツ枕を使えとか お尻の痣について何度か聞かれたりしていたが お尻の痣は多分昔か...
Ⅱ.母在宅介護1

しおれてしぼんだ

生気を全くなくした土気色の顔の母が「火にかけてたのを忘れた」と帰ってきた私に頼るように言いに来た 鍋だかやかんを火にかけてそのまま忘れてしまったようで部屋がちょっと焦げ臭かった 父にひどく叱られたのか生気を吸い取られてすっかりしおれて、しぼ...
Ⅱ.母在宅介護1

真っ赤な頬

私の社員旅行の朝にいなくなった母は 公園で転んで顔の片側の頬全体をすりむいて当分の間、通院が必要になった 病院にいくと頬のガーゼをはがされ傷がまだ乾いていない真っ赤な頬があらわになる 消毒をして薬をつける どれだけの痛みに耐えているのか小柄...
Ⅱ.母在宅介護1

旅行の朝

ふと気づいたら家の中のどこにもいない 社員旅行の日の朝、母が突然いなくなった何度探しても家の中のどこにもいない家の外も探したが見当たらない 社員旅行といってもその年は、いくつかある旅行先の行きたい場所を選べたので介護中の自分は海外ではなく国...
Ⅱ.母在宅介護1

真冬の夜遅く介護中の母と何故タクシーで?

医師の診察が終わり寝問着しか着ていない母に自分が着てきた冬物のロングコートを着せて真冬の夜の厳しい寒さに母が震えることのないようにしっかりコートのボタンもしめて母と二人、タクシーに乗って家に帰る 会社のブラウスとスカートの制服にカーディガン...
Ⅱ.母在宅介護1

露程も思わなかったこと

このまま家でもみていけそうだ 母が老健から一時退所して家に戻ってきて一定期間が過ぎたらまた老健に戻る予定で 老健の職員の方からも「またね」といって送り出してもらったが 家に帰ってきて日常生活を送っていると老健に入所する前より足腰もしっかりし...
Ⅰ.突然・・・

任務遂行

何度目の母の入院の時か忘れたが明日も病院に行くねと母に告げた翌日に雪が降った 会社帰りにいつもの電車とバスを乗り継いで病院に向かったが かなりの降雪で電車もバスも遅れに遅れてもう消灯時間も迫ってきて間に合わないかと思ったが あと15分くらい...
Ⅰ.突然・・・

再入院

診察室で母がいつから躁状態に戻ったのかと母の担当の先生に聞かれて私はちょっとぶっきらぼうに退院した日からだと答えると 先生はえーっ?と少し余裕のあるそんな馬鹿なと言いたげな様子だったが診察を受けるとすぐに母の再入院は決まった この再入院の前...
Ⅰ.突然・・・

きざみしょく

病室に母の食事を運んできてさあ食べさせようと食器の蓋を取ると何の手違いかきざみ食ではなかった 母は入院する際にあぶないからと入れ歯を外されてからその後もずっと入れ歯をしないでいたので食物が小さく刻まれていないと食べることができない そうなっ...
Ⅰ.突然・・・

戦場の母

死んでしまうのではないか 決して命にかかわるようなそんな病気ではなかったが 母の初めての入院は心配で入院してからほぼ毎日病院に会いに行ったが 病室に置かれる医療機器や母の体につながれる管が日に日に多くなり 意識もはっきりせず薬で朦朧としてい...