詩的介護

Ⅴ.それから・・・

浮いた

母が亡くなった夜 夜ベッドで寝ていると目を閉じたまま急に身体が10センチくらい宙に浮いた感じがした そしていきなり寝ている体の方向がガクッと90度変わり 寝たままの身体が浮いたまま足の方向にかなりのスピードで部屋の端までゴォーっと進んでいっ...
Ⅴ.それから・・・

書きかけの寄せ書き

「早く元気になりますように」「またお会いするのを楽しみしています」 母が亡くなって自宅に安置されている時にお世話になっていたグループホームの職員の方が届けてくれた母の顔写真が真ん中に貼られた寄せ書きの色紙は その死があまりにも急だったことを...
Ⅴ.それから・・・

お兄さんたちの事

夜勤明けのグループホームのお兄さんが親族だけの葬儀を数日後に控え家に安置されている亡くなった母に会いに立ち寄ってくれて 母がグループホームで好んで飲んでいると聞かされていたジョアを上着の懐のあたりから、さっと取りだしさり気なく手向けてお線香...
Ⅳ.母在宅介護2

おねえさん

思春期の頃から親が鬱陶しくて 母とちゃんとした大人の会話をしていなかったせいか 母の認知症が進んで私を呼ぶのに「おねえさん」とか「すみませんが・・・」とか私の事が分からなくなって面識のない他人に話しかけるようにされても 母との深い思い出も特...
Ⅳ.母在宅介護2

温かい手になりたい

「私も温かい手になりたいの」 冬のある日デイケアから戻ってきた認知症の母の冷えて冷たくなった手を 自分の両手で包んで温めていた時に母の口から出てきた 「温かい手になりたい」心がふわっと温かくなるかわいいお願い このくらいのお願いなら私にもか...
Ⅴ.それから・・・

鉄の扉

インターホンを押して名前を名乗ると職員の方が鉄の扉を内側から開けてくれる 母が入院した病院や老健そして最後にICUに入院した時にも母は鉄の扉の内側にいた 鉄の扉は扉の外の世界で生きるのが難しい人や 扉の外の世界の有害なものから守らなくてはな...
Ⅳ.母在宅介護2

むすめがかえてきますように

グループホームでのある年の七夕の短冊に震えるような字で「むすめがかえて(帰って?)きますように」と書かれていた 母は、一度目の結婚で生まれて1年も経たない子をおいて家を出されて 2度目の結婚で生まれた私は幼少時に交通事故で生死の間をさまよう...
Ⅴ.それから・・・

見知らぬ男の子

亡くなった母の出棺前 棺の中には母のいくつかの私物と母への手紙と そしてアルバムの中にあった見たことのない知らない男の子の写真を入れた 知らない男の子が誰なのか分かったのは私が高校生の頃だっただろうか 母はいますか?と知らない男の人から電話...
Ⅳ.母在宅介護2

はじまり

このまま家でもみていけそうだ 母が老健から一時退所して一定期間を家で過ごしたら戻る予定で 老健の職員の方からも「またね」といって送り出してもらったが 家に帰ってくると老健に入所する前より足腰もしっかりして 人に頼らず何でも自分からしようとす...
Ⅲ.父の入院と介護

ぴったりのことば

「お母さんを大切にしないとね」 父が亡くなった病院でお世話になったご挨拶をしたときに婦長さんがかけてくれたことば 人が亡くなった時にどんな言葉をかけたらいいのか 大事な場面で相手にかけるぴったりの言葉選びは難しい 同じ言葉でも人や立場によっ...