詩的介護

Ⅳ.母在宅介護2

あやつり人形

暑い夏の日親戚の車で母の父親のお墓詣り 外歩きは車いすの親戚の叔父さんと母はお留守番で静かに冷房の効いた車の中 叔母達と私でお墓参りを終えると 田舎で取れたてのみずみずしい梨や甘くて柔らかい桃や、すいかを歓談しながらごちそうになって 帰りの...
Ⅳ.母在宅介護2

東京新聞

昔、一時期家で東京新聞をとっていた 東京新聞と家族のかかわりはそれだけだったけれど いつのまにか母の頭の中では私が東京新聞に勤めていることになっていたようで 「東京新聞取り始めました」と、介護関係の方が私に話してくれた時にはああ、そうなんだ...
Ⅳ.母在宅介護2

ちょこんと

朝デイケアの新しい職員の方が自宅に車で迎えに訪れて小柄な母が玄関の上がり框にちょこんと大人しく腰掛けている姿をみて「かわいい」と軽く声をあげた 昼間にグループホームに母の様子を見に行くとちょこんと椅子に座ってテレビを見ている母の横顔がみえた...
Ⅳ.母在宅介護2

真夜中の冒険

朝、母を起こしにベッドまできたが母の姿が見えない 布団をめくってもそこにもいない 伝い歩きも一人ではおぼつかないのでまさか、一人で起きてどこかへ行くとは考えられない 母の介護用のベッドと密接している押入れが開いていることには気づいていたけれ...
Ⅳ.母在宅介護2

モヒカン

「○〇(←母の名前)さんんのかっこいい髪形が好きです」 毎年母の誕生日にグループホームの職員の方々からのメッセージと母の写真が貼られたカードをいただいていた 冒頭の言葉は、ある年の誕生日カードに職員の方が書いてくださったメッセージだがその頃...
Ⅳ.母在宅介護2

おはようってなぁに?

朝、いつものようにベッドで寝ている母に「おはよう」と声をかけると 「おはようってなぁに?」と尋ねられた 自分がどこにいて何をしているのか自分が誰なのか分からなくなったり 年齢を尋ねると時には6歳と答えることもある母がおはようが分からなくても...
Ⅲ.父の入院と介護

あら、そう

「あら、そう・・・」その後にお悔やみの言葉が続くのを無意識のうちに期待していたがわかりましたというような意味以外の言葉が福祉の係の方から発せられることはなかった 父の介護が必要になってから福祉の係の方には色々とお世話になっていた ある時は父...
Ⅴ.それから・・・

父のあしあと

ご近所の家まで町会費の集金に出かけて玄関のインターホンを鳴らすと 鼻にチューブを入れたおじいさんが玄関の横の部屋のサッシを開いて顔を出した 自分の名前と用件を告げるとおじいさんは部屋の中を何かゴソゴソと探し始めてのど飴の入った袋を町会費を用...
Ⅳ.母在宅介護2

夜中のトントン

夜中にトントンと部屋のドアを微かにたたく音が聞こえた気がした 気のせいかと思ってまどろんでいるとまた微かにドアをたたく音が聞こえる もしかしてと思ってドアを開けると寝間着姿の母が立っている 昼間でも机や家具を頼りにしながら家の中を歩く母が電...
Ⅴ.それから・・・

帰ってきた

母の出棺が終わり車が火葬場へ向かう途中母の通ったグループホームの前に続く坂道の角に差しかかるとグループホームの職員の方の姿が見えた 母を乗せた車の到着を待っていてくれたのだ 出棺から火葬場へ向かう途中に故人縁の地に立ち寄る葬儀会社のサービス...