詩的介護

Ⅳ.母在宅介護2

初詣

急な坂道車椅子を押しながら上りきって境内の中に入っていく 皆がお参りをするのは数段の階段をのぼった先になるが 階段の下に止めた車椅子の母に向かって こうやって手を合わせてお参りしてねと 私が両手を合わせると 母もそれを真似て手を合わせて目を...
Ⅳ.母在宅介護2

家でも車いす

椅子に座っても身体を支えられなくて上体がグニャっとなる 自分で体勢を保つことができなくなると 小柄な母をベッドから車椅子に移動させるだけでもかなり大変で 自分の体力と注意力両方の負担が大きくなった 自分が体勢を崩したら母が怪我をしてしまうの...
Ⅳ.母在宅介護2

行く日ですか

朝、母を起こしに行くと今日は行く日ですか?とデイケアに行く日かどうか尋ねてくることが多かった 認知症の母は時々自分がどこにいるのかさらに自分が誰なのかも分からなくなることもあったが デイケアと認識していなくてもどこかに出かけるか出かけないか...
Ⅳ.母在宅介護2

母の空気

母が椅子に座っているとそこだけゆったりとした時間が流れているようだと 母の通うグループホームの方が母の通う母の誕生日に書いてくれたメッセージのとおり 私が仕事から帰っても母は無言で、お帰りとも言わず時には無防備な寝顔のままでも 母がそこにい...
Ⅳ.母在宅介護2

夜中の戦士

母を起こすことから始まるいつもの朝 ドアを開けると母の寝ているベッドの景色がいつもと違う 一体何が起こったのか ほんの数秒で理解してベッドに駆け寄る 介護用ベッドの転倒予防の鉄柵の間の狭い隙間から 頭をだらんと下に垂らして垂れた頭の下の床が...
Ⅳ.母在宅介護2

プロ

足が痛むようで立たせようとすると顔をしかめて歩くことができなくなった母 どこがどう痛むのか 「ここが痛い?」と訊ねると足や足以外でも触るところすべて痛いと答える母 このまま、もう歩けなくなってしまうのか・・ そして寝たきりになってしまうのか...
Ⅳ.母在宅介護2

ぶらぶら

母の背中側から両脇の下に腕を入れて身体を支えて歩かせようとすると 時々母は足を浮かせてぶらぶらさせて体重を預けてくることがあった 小さな子供のお茶目な悪戯のようでクスっとする 身体も小さく足腰も弱って認知症も段々進んでいって 自然と私が母の...
Ⅳ.母在宅介護2

臭う

母は要介護4くらいの時から立ち上がるのに介助が必要で一人でトイレに行けずリハビリパンツに尿取りパッドを使用して しかも認知症なので時々おむつの中の便を手でさわってしまったりその手を周りにこすりつけたり・・・ もちろんそんな惨事に気づいた時に...
Ⅳ.母在宅介護2

大事件

触ってはいけない不浄なものだという事が認知症の母には分からなくなっていて 便が出てしまったおむつの中に手を入れてしまう おむつの中が気持ち悪くて落ち着かなくて手を入れてしまうのか本人は普通に動いているだけなのだろうが 発見してしまったらすぐ...
Ⅳ.母在宅介護2

5本指の手袋

5本指の小さな手袋母の手の大きさに合わせたようにぴったりの毛糸の手袋 いつ、どこで手に入れたのか全く覚えていないが 朝、デイケアに行く支度で急いで母の指を入れようとすると自ら指を入れることがほとんどないので指一本のところに2本入ってしまった...