帰ってきた

母の出棺が終わり車が火葬場へ向かう途中
母の通ったグループホームの前に続く坂道の角に差しかかると
グループホームの職員の方の姿が見えた

母を乗せた車の到着を待っていてくれたのだ

出棺から火葬場へ向かう途中に
故人縁の地に立ち寄る葬儀会社のサービスで
10年近くお世話になったグループホームに立ち寄る時刻を
職員の方に知らせておいた

車がグループホームの駐車スペースのある
広めの門の前までくると
職員の方や通所されている方々が
総勢20名ほど横に広がって並んで
車の中の母に向かって
一生懸命に手をふってくれている

泣きそうな表情や
涙をためて手を振ってくれている方々が
車の中から確認できて
私も胸が熱くなり
白木の位牌を胸に抱きながら涙がこぼれた

6月にしては暑い炎天下のもと
母のために手を振ってくれている方達に
車の中から何度も頭を下げた

親族だけの
少人数で見送った葬儀だったので
グループホームの沢山の方達に見送ってもらえて
本当によかったと思った

ずっと手を振り続けてくれる方達から
離れるのがとても名残惜しくて
やっとの思いで運転手さんに
車を出してくださいと伝えた

母が亡くなってから
グループホームの職員の方からいただいた
未完成の色紙の寄せ書きは

入院した母の帰りを待つ
メッセージをたくさんいただいていたが
思いは届かず
思いもよらず早く亡くなってしまったが

こんな形でも
グループホームに帰ってくることができて
母も喜んでいる
と思いたい







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