会社が午前半休の日だったので
身支度を整えて
そろそろ仕事に出かけようかという時に
家の電話がなった
丁度電話の近くにいた私が
受話器を取ると
救急車の隊員の方からで
父が自転車で転んで病院に運ぶところだが
父のかかりつけの医者があれば
教えてほしいとのことだった
父は頻繁に出かける場所に自転車で行っていたはずだが
迷子になってしまったようで
何故そんな場所に?
というような所で転んだところを
誰かが救急車を呼んでくれたらしい
救急車の隊員の方に
定期的に通っている脳神経外科を伝えて
午後から出勤予定だった会社には
行けなくなったと電話を入れて
すぐに私も脳神経外科へ向かうことにした
病院に着くと
上着を裏返しに着て立っている父を見つけて
大丈夫かと声をかけたら
ちょっとバツが悪そうに「ああ」と言った
何であんな所までいったのか尋ねたが
疲れたから寝ようと思って倒れてしまった
と父は答えた
自転車で走り続けて迷子になって
疲れてしまったからそのまま寝ようと思ったらしい
診察が終わり
特に異常はなかったので
病院からタクシーで父を連れて帰って
大人しくしているように話してから
私は、ほどなくして父の自転車回収に出発した
自転車は父が自転車に乗ったまま寝ようとして
転んだ場所においてあるのだ
電車に乗って
救急車の隊員の方が教えてくれた場所までいくと
自転車は道路のわきにきちんと置かれていた
その場所から家に帰る道を知らなかったが
自転車にまたがりとりあえず走り出すと
知っている駅に行くバスが通ったので
バスが走っていく方向に自転車をこいだ
バスはすぐ見失ったが
途中の交番で道を尋ねたりして
見覚えのある景色の場所まで
どうにかたどり着いたので
そこからは安心してペダ踏み家路についた
今ならスマホですぐに道も簡単にわかるが
まだそんな事ができない時代の話だ
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